デザイン領域 中部文具工業組合「2024 文具デザインプロジェクト」最終審査発表会を開催

 デザイン領域と中部文具工業組合加盟の文具メーカーとの連携プロジェクト、「2024 文具デザインプロジェクト」の最終審査発表会が、2024年6月5日(水)、シヤチハタ株式会社 本社会議室にて開催されました。今年の課題は、シヤチハタ株式会社「〇〇な仕事の人/〇〇な趣味がある人に役立つスタンプ・筆記具」、森松産業株式会社は「まもる・保護する+◯◯」の2つ。13名の学生・大学院生がそれぞれに課題に対し、プロダクトを考えて提案しました。

 発表会に先立ち、担当する三枝樹成昭 講師、シヤチハタ株式会社 舟橋正剛 代表取締役社長から挨拶がありました。三枝樹講師は「学生さんそれぞれのバイトや体験したこと、また趣味など、そんな自分の経験から発想してデザインを提案して欲しいというものでしたが、難しかったのはないかと思います。自分の創りたいものよりも、それぞれの経験に基づくものが作品となっています」と学生それぞれの経験が生かされた提案であると説明しました。
 シヤチハタ株式会社 舟橋正剛 代表取締役社長からは「名古屋芸大さんとのデザインコラボ、毎年、非常に楽しみにしております。今年の課題を読み返してみたら『〇〇な仕事の人/〇〇な趣味がある人に役立つスタンプ・筆記具』って、いわば何でも良いってことで、まとまっていない課題を出してしまって申し訳ありません(笑)。スタンプ系の商品は、BtoBがかなり成熟して行き詰まってきており、BtoCのバリエーションの広がりに期待がかかります。皆さんの感性を生かしたアイデアとデザインを楽しみにしています」とユーモアを交えながらもプロジェクトに期待する言葉をいただきました。

 プレゼンテーションは一人10分程度で2案の説明を行います。サンプルやモックアップを作って来た学生もおり、熱のこもったものとなりました。評価については、①ターゲットは明確か、②シナリオは具体的か、③アイデアは魅力的か、④ユーザーが使いやすいデザインか、⑤発表がわかりやすかったか、と5つの項目で採点し最優秀賞1点、メーカー賞が2点が選ばれることになります。
 プレゼンテーションは、緊張したしながらもユーモアを交えたものもあり、白熱したものになりました。それぞれ、自分の経験を基にした提案であるため質問にもしっかりと受け答えができ、いずれも非常に説得力のある提案となりました。なかには、審査委員から「今、商品企画で考えている案とそっくりで、どこかで漏れたのではないかと驚きました」との声も聞かれ、実際の商品と同じレベルでの提案であることがわかり、水準の高いものとなりました。提案をブラッシュアップしての商品化も視野に入れていることもあり具体的にお見せできないのが残念ですが、そのためもあってか審査員の質疑も真剣そのものです。トレーディングカードゲームや流行のスイーツを扱う提案などは、現在販売されている商品と世代的な差を感じさせるもので、その点だけでも学生が提案することに意義を感じさせます。

 審査の結果、最優秀賞はシヤチハタの課題に対し、大学院 杉浦泰偲さんの「STAN PON」、メーカー賞 シヤチハタ株式会社賞はインダストリアル&セラミックデザインコース 柴田優否さん「テンポン」、メーカー賞 森松産業株式会社賞はカーデザインコース 久保田耀紘さん「メガネックレス」に決定しました。
 最優秀賞「STAN PON」は、杉浦さんの建築現場で働いた経験が基になっているもので“墨出し”の作業を効率化し身体への負担を軽減する提案。シヤチハタ賞の「テンポン」も柴田さんがアルバイトで経験したレジの仕事を効率化する提案で、どちらもそれぞれの経験から発想されたものとなりました。森松賞「メガネックレス」は森松産業株式会社のプラスチック素材を上手く活用したおしゃれなメガネケースです。いずれのプレゼンテーションにも説得力があり納得の受賞となりました。

 審査を終えて、森松産業株式会社 森直樹 代表取締役社長は「良いデザインのものを使うことで、仕事の効率が良くなったり使って気持ちが良かったり、使う人の気持ちを良い方向へ変えることができます。新しいものを生み出すことは、単に困り事を解決するだけではなく、感動を与えるくらいの大きな力を持っているのだと思います。このプロジェクトにかかわり、毎年、考えさせられますが、つくづくそう思います。今回でたアイデアからもヒントをいただき、実際の商品へと生かしていけるようにしたいと思います。今後も、ぜひご協力いただきますようお願いします。お疲れさまでした」と労いの言葉をいただきました。
 シヤチハタ株式会社 佐藤旭 取締役からは「非常にレベルが高いものになったと思います。プレゼンテーションも非常に上手かったです。 ストーリー性があり単なるものだけのプレゼンというよりは、使用シーンを含め非常に説得力のあるプレゼンでとても良かったと思います。先生方がいろいろとご指導いただいた形が年々積み重なり、こういう形になってきてると思います。来年も引き続きよろしくお願いできればと思っております」と締めくくりました。
 最後に三枝樹講師からは「ご評価いただいたのは、企業様から学校へ出向いていただきフェイストゥフェイスでお話しでき、プロジェクトの内容を正確に協議することができたおかげだと思います。こうした交流の積み重ねがあり、より確実なコンセプトの提案につながっているのではと感じます。今後とも、両者にとって実りのあるプロジェクトにしていきたいと思います。ありがとうございました」とお礼の言葉があり、最終審査発表会は終了となりました。