2023年に引き続き、美術領域では西尾市と協働し、佐久島の漂着ごみの問題を社会にアピールするための作品作りを行います。漂着ごみを使って作品を制作、島側の弁天サロン内弁天ギャラリーと本土側の佐久島ナビステーション、SDGsのイベントなどに作品を展示、環境問題を啓発しごみの発生を抑制しようというプロジェクトです。
2024年6月15日(土)、16日(日)の2日間、プロジェクトに参加するコミュニケーションアートコースの学生、大学院生の16名が佐久島に渡り、リサーチとフィールドワークを行いました。海岸でごみ拾いを行い素材となるものを集め、佐久島に点在する松岡徹教授、荒木由香里非常勤講師らの作品を鑑賞、また、佐久島をアートの島として活性化させた仕掛け人ともいえる有限会社オフィス・マッチング・モウル ディレクター/代表取締役 内藤美和さんに、佐久島の問題や取り組みについてお話しいただきました。
1日目、佐久島の東港へ到着、さっそく島の東端、丹梨海岸へ赴きます。途中、森の中にある荒木非常勤講師の作品「星屑のテーブルクロス」を鑑賞しつつ、ごみ拾いの準備。「星屑のテーブルクロス」には、海で拾ったシーグラス(波に揉まれて角の取れたガラス片)や陶器の破片などが散りばめられた作品で、学生らのモチベーションも高まります。ごみ袋を手に、軍手とトングを使ってごみを集めます。海岸のごみは、人の入りやすい場所ではそれほど酷くはありませんが、少し離れた場所や入り江になっているようなところでは溜まりやすいようで、ペットボトルや大きなプラスチック系のごみなどが散乱しています。ごみ拾いと同時に、学生らは自分の作品の素材となるものも集めます。カラフルなプラスチックのごみを集めて作品にしようと考える学生もいれば、貝殻や生物の骨など海と自然を感じさせるもの、シーグラスや陶器の破片など歴史を感じさせるものなど、それぞれいろいろな素材を集めます。なかにはウニの殻や大きな魚の骨ばかり集めてみるなど、ユニークな素材も見られました。お互いに集めているものを交換しながら、1時間半ほどごみ拾いと素材集めを行いました。大きな袋に15袋ほど、たくさんのごみが集まりました。
午後からは、オフィス・マッチング・モウルの内藤さんに、佐久島の問題やアートについてお話しいただきました。
オフィス・マッチング・モウルは、現代美術に関する展覧会、アートによる地域活性化事業、ワークショップなどを企画・運営する会社で、佐久島での活動は2001年からとのこと。松岡教授はその最初期からかかわり、数多くの作品を手がけています。内藤さんのお話は、現在の佐久島の状況から始まりました。佐久島の人口は現在200人ほど、過疎化と高齢化が進んでいます。アートプロジェクト開始当初は人口440人だったそうで、20年で半減しているのが現状です。ただ、観光客は大幅に増え、近年では渡船利用者数はコンスタントに10万人以上となっているといいます。
アートプロジェクトを行うときに考えたこととして、「都市部のギャラリーで行う展覧会とは違い、期間が限られるのでは多くの集客は不可能。できるだけ長く、できればいつ島を訪れても作品を鑑賞できるようにしておきたい」と常設できる作品を増やしていったといいます。また、「島のさまざまな場所に作品が点在することによって、作品を探しながら鑑賞する。観光客が受け身ではなく能動的に行動することで、作品を楽しむことに加え、島の魅力を発見してもらえるようになった」といいます。荒木由香里非常勤講師の作品も、あえてガイドブックに詳細な場所の記載をしないようにし、探す楽しみを感じられるようになっていると説明します。内藤さんは、アート作品のほかにも島の文化や歴史などの魅力も多くの人に知って欲しいと、佐久島の自然やSDGsといった切り口も考えて欲しいと説明しました。
最後に「今回は漂着ごみについてですが、ごみにかかわらずいいアイデアがあればぜひ提案して欲しい。面白いアイデアがあれば、今回のプロジェクト以外でも取り上げる可能性があるので、ぜひ手を挙げて欲しいと思います」と説明をまとめました。
そして、点在するアート作品の鑑賞を行い、「イーストハウス」(南川祐輝)、「タイノウラ星団」(荒木由香里)、正念寺「海神さま」(松岡徹)、大島「佐久島のお庭」(松岡徹)、平古古墳群、「佐久島の秘密基地/アポロ」(POINT 長岡勉+田中正洋)などを散策して鑑賞。佐久島の自然と作品の魅力を体験しました。
2日目は、レンタルサイクルを使い島の西側を散策、午後からはごみ拾いを行い、2日間のリサーチ、フィールドワークを終えました。松岡教授は「ごみを使った作品が再びごみにならないように、作品として残す価値のあるものになるよう、学生たちにはがんばってもらいたい」と抱負を語りました。
今後、7、8月で作品制作、9月に学内で発表、10月に行われる「三河湾大感謝祭」、「SDGsあいちEXPO」に出展する予定です。