インダストリアル&セラミックデザインコース、フジプレコン株式会社様との連携、工場見学と制作を体験

 インダストリアル&セラミックデザインコースでは、鉄道・道路で利用される側溝や電線などを収容するトラフなど、コンクリート製品を製造する企業、 フジプレコン株式会社様と連携し、コンクリート製品を製造する過程で発生する余剰分をリサイクルした、コンクリート製のプ ロダクト制作を行っています。昨年度は、考案したアイデアをプレゼンテーション、後藤ゼミ考案の「U字溝フォントとU字溝を使った文具」(U字溝をモチーフとしてアルファベットの立体で表札やPOPなどに使用)と、小林由奈さんの「チーズスタンド」(穴に筆記用具や歯ブラシを差し込んで使うチーズ型の置物)の2つを制作することと決まりました。(→記事はこちら
 今年度はその2案を量産化すること、さらに商品バリエーションを増やすため新たな提案を行うことを目指します。2024年6月24日(月)、プロジェクトに参加する学生は豊橋市のフジプレコン豊橋工場を訪れ、コンクリートプラントと型にコンクリートを流し込んで二次製品を作る製造現場を見学させていただきました。

 はじめに、松林克法 代表取締役社長から、フジプレコンの会社概要について説明していただきました。フジプレコンは鉄道製品が主力で線路脇の配線などを収納する側溝、遮断機などの基礎、また雑草対策のコンクリートマットなど、社会インフラにかかわる製品を数多く製造しています。SDGsにも積極的に取り組み、コンクリートを切断する際に発生する粉じんの問題、製造プロセスから炭素を出さない低炭素コンクリートの開発など、2042年のカーボンフリー化を目標に進めているといいます。
 続いて、製造部の伊藤知美さんから、コンクリートの材料や成分、特徴などについて説明していただきました。コンクリートはセメントと水に「骨材」(砂利や砂など)を混ぜたもので、骨材がコンクリートの7割を占めているとのこと。骨材の分量と粒の大きさ、また、鉄筋など補強材の有無で強度など性質が変わり、用途に合わせて作り分けているとのことです。
 次に、実際に工場を見せていただきました。まずは、コンクリートプラント。保管されている各種骨材がベルトコンベアで運ばれ、セメントと水を加え混ぜ合わせてコンクリートを作ります。計量などコンピュータで管理され、できあがったコンクリートはすぐに二次製品の製造ヤードへ運ばれます。ここで問題になるのが余剰コンクリート。コンクリートプラントの最下部にコンテナが置かれ、そこに余剰分のコンクリートが溜まります。1日に1トンほどの余剰が発生してしまうとのことで、これを活用しようというのがこのプロジェクトの目的です。二次製品の製造現場、また製品置き場では、その数量が印象的です。さまざまな形と大きさのコンクリート製品を製造していることがわかります。いずれも型を用意してそこへ流し込み固めるのですが、膨大な種類が用意されています。型に流し込んだコンクリートは、焼き物のように縮むこともなくそのままの形で凝固することも、よく理解できました。

 工場見学の後、今度は実際にサンプル造りを体験しました。製造部 伊藤さんの指導の下、型にコンクリートを流し込みました。フジプレコンが運営するPRECONSHOPで販売されている、プレコンキューブと盆景プランター “ienami”の型を使います。
 はじめに型をバラして丁寧に掃除し、隙間ができないようにしっかりと組み立てます。そこへ離型剤をスプレーして準備完了、コンクリートを流し込みます。流し込んだあと、軽くハンマーで振動を加えると、なかに含まれていた空気が泡として浮かびます。それらを取り除き、固まったら取り出します。固まるまで一昼夜かかるので体験はここまででしたが、固まったら取りだしバリを取り、表面をサンドペーパーで仕上げて完成となります。

 学生らは、今後3Dプリンターを使い「U字溝フォント」の原型を作ることになっていますが、伊藤さんがサンプルに作った「チーズスタンド」を見せていただきながら、原型を作るときの注意点を伺いました。チーズスタンドは、原型を基に伊藤さんがシリコンで型を取って作ったもの。穴の部分が難しいとのことで、コンクリートから引き抜くときに抜きやすいようテーパー(先細りになるよう傾斜)を付けて欲しい、外観部分はシリコン型を割って取り出せばよいのでどんな形でも大丈夫、と説明を受けました。これらを反映して、学生らは3DプリンターでU字溝フォントの原型を設計することとなりました。

 伊藤さんの「コンクリートに触れてもらい、学生さんたちに素材として親しみを持ってもらえたら」という言葉が印象的でした。今後、もう少し製品種類を増やしたいと松林克法 代表取締役社長からの要望もあり、新しい提案も含めたくさんの課題が見えた実りの多い工場見学となりました。