デザイン領域メタル&ジュエリーデザインコース3年生は、今年度、GRAFFシニアデザイナー、元ロレンツ・バウマー、ルイ・ヴィトン、ヴァンクリーフ&アーペルなどハイブランドのジュエリーデザイナーとしてパリで活躍する名和光道さんを特別客員教授にお迎えし、尾張七宝を使ったジュエリーをデザインして制作、展示するまでの講座を行ってきました。2024年7月に、同じく欧州で活躍する株式会社スズサン CEO クリエイティブディレクター 村瀬弘行さんとの対談(→関連記事)を皮切りに、後期の授業であま市七宝焼アートヴィレッジの見学、七宝を使ったジュエリーデザインの考案と名和さんよるチェック、野中さつき 非常勤講師(七宝焼窯元・太田七宝六代目)による指導を受けながらの作品制作と進め、2024年12月14日(土)~25日(水)、SLOW ART CENTER NAGOYAにて「尾張七宝プロジェクト展」として作品を展示しました。そして、会期終演間際の12月24日(火)、オンラインでパリから名和さんに作品を観ていただき、講評会を行いました。
講評会に先立ち、SLOW ART CENTER NAGOYAについての説明がSLOW ART LAB プロジェクトマネージャーの山本麦子さんからありました。持続可能性、再利用可能性を考慮した設計の建築、アートと地域活性化の融合という役割、市民に開かれたアート展示を行う場所でもあり大学との連携もそうした一環であるとされました。学生らにとっても、社会に開かれた場での展示は、非常に有意義な経験となりました。
講評会では、学生たちが制作した作品について順番に発表を行い講評が行われました。学生たちの作品は、七宝焼や宝石加工など独自の技法を活用しそれぞれのテーマや個性を表現したもので、宝石を水に見立てた繊細なデザイン、自然や動物をモチーフにした装飾品、伝統的な素材を現代的な感覚で再構成した作品など、多様なアプローチが見られました。制作過程での苦労や学びについても説明し、特にリサーチを通して自身の好みやテーマを深掘りすることの意味や、作品の背後にあるストーリーや意図についてもしっかりと説明しました。それぞれの作品は、展示を視野に入れて制作されたもので、台座や見せ方にも気を配っており、それらも含め見応えのあるものに仕上がりました。名和さんは、学生たちのオリジナリティあふれる作品を高く評価し、自分が好きなものに向き合うことの大切さや、技術と感性を磨き続ける意義についてアドバイスを送りました。「社会に出て仕事として取り組むようになると、最初は言われたことをやらなければならないことや我慢しなければいけないことばかりで、今回のように自分が好きなことを思い切りできることはなかなかないのではと思います。時間を忘れてものづくりしているときが、たぶん、いちばん幸せな時間だと思います。今回、自分の好きを掘り下げて考えて、楽しんで作ってくれたことがどの作品からも伝わってきます。技術や感性を高めていればいずれ自分の好きなことができるタイミングが来ると思うので、それまで頑張って欲しいなと思います」と励ましの言葉をいただきました。
学生たちからは「名和先生にほめていただいて、好きなことを作品にしていいんだと、自分でやっていい範囲が広がりすごくやりやすかったです」「リサーチからというところで、自分の好きなことに対して深く調べられたところがとても印象深かったです」「デザインにちょっと自信がなかったので名和先生にほめていただき嬉しかったです」といった声が聞かれ、多くの学生にとって自分の強みや興味を改めて認識する機会となり、また、名和先生からの肯定的なフィードバックが制作へのモチベーションにつながっていたとの感想がきかれました。
今回の制作、展示の経験が、今後の創作活動やキャリアにとっても大きなものになりそうな、充実した展示になりました。