テキスタイルデザインコース「有松絞り手ぬぐいブランドプロジェクト」は、学生が有松絞りを使いオリジナルデザインの手ぬぐいを制作し、毎年6月に行われる「有松絞りまつり」の会場で販売するというプロジェクト。絞りまつりは、昨年、今年とコロナ禍のため中止されましたが、プロジェクトは例年行われており、工夫しながらさまざまな場所で販売を続けています。手ぬぐいを商品として捉え、コンセプトを考えブランドを考案、実際に販売する店舗をプロデュースする実践的な体験ができる重要な演習です。昨年は、絞りまつりへの出展がかなわなかっただけでなく、ドイツで活動する特別客員教授 SUZUSAN クリエイティブ・ディレクター 村瀬弘行氏をお招きすることができず、オンラインでの講義となっていました。今年村瀬氏は帰国することができ、待機期間を経て、2021年10月27日に貴重な対面講義の実現となりました。
講義に先立ち、村瀬氏からは、自身が運営する会社 SUZUSAN の小売店舗「aigaeshi」を、新しいブランド「tetof」としてリニューアルしたことについて説明がありました。その過程は、まさにこれから演習で行うブランドプロデュースそのもので、とても参考になる内容です。社内向けに行ったプレゼンテーションの資料を公開しつつ、マーケティングや商品構成について考えたことなどを説明いただきました。学生らがこれから行う演習と重なる部分も多く、実際のブランドでも同じように考えて運営していることが理解できたのではないかと思います。
さて、演習ですが、前回までの授業でテキスタイルデザインコース2年生は2つのグループに分かれ、それぞれムードボード(アイデアやコンセプトを紙面上にまとめてコラージュしたもの)を作成、それぞれのグループが想定する顧客(バーチャルカスタマー)をディスカッションしています。これらを発表するところから始まりました。それぞれのグループでテーマとするカラーと3人のバーチャルカスタマーを説明します。例年、具体的に性別、年齢、生活の背景や消費性向などを想定するバーチャルカスタマーの説明が、学生らが考える時代や流行を反映していて興味深いのですが、今年は6名中4名が男性で、男性を強く意識したブランドとなり、これまでの手ぬぐいプロジェクトとは一風異なった展開となりました。
この後、ブランド名を決めるディスカッションを行い、大人っぽさやシックなイメージの「Varigent」(various、gentleなどからの造語)、落ち着きや自然や四季を連想させる「木洩レ日」に、それぞれのブランド名を決定しました。名前から触発されるイメージの良さやロゴなどの展開を予感させるブランド名に扇教授も村瀬氏も大いに満足、この後の展開に一層期待が高まりました。続き、それぞれのグループで店長を2名ずつ選出、ロゴのアイデア出しを行い、SNSで発信するために150文字程度でブランドのコンセプトを紹介する説明文を考えました。
次回に向け、実際の染めに使う4色のカラーを決定、また、バーチャルカスタマーがどうような動線で絞りまつりに訪れ、どんなシーンで手ぬぐいを使うのか、できるだけイメージを具体化しておくように課題が出されました。デパートやショップに赴き、お店の作りを観察したり、チラシやショッパー、スタッフのコスチュームなど、実際の店舗がどのようにできているかを意識して見ておくことも大事なことと説明があり、注意しておくように意識付けも行われました。
講義の最後に、村瀬氏がパリを訪れたときに見た、凱旋門を布で梱包したクリスト&ジャンヌ=クロードの最後の作品とそれを楽しげに見つめるパリの人々を紹介し、テキスタイルは思っているよりも大きなことが可能でたくさんの人に希望と楽しみを与えることのできるもの、そう思って取り組んで欲しいと学生らを鼓舞激励し、講義は終了となりました。