2024年5月7日(火)、先端メディア表現コースでは、VR/ARコンテンツの企画・制作・運用を行うイクスアール株式会社 代表の蟹江真氏をお招きし、この2024年2月にアメリカで発売されたばかりの空間コンピューティングデバイス「Apple Vision Pro」をお持ちいただき、体験会と“XR”についての特別講義を行っていただきました。先端メディア表現コースの学生、メディアデザインの院生、またデバイスに関心のある講師も新しいデバイスを体験しました。
はじめに、蟹江氏が自己紹介と「XR講習 ~XRの初歩と今~」という題目でお話しいただきました。イクスアール株式会社は、これまでバーチャルトレーニングシミュレーター、産業向け実践教育XRなどヘッドセットを使ったコンテンツを企画制作してきた企業。代表の蟹江氏は、2014年に初めてゴーグルを使ったVR(仮想現実)を体験、仕事にしたいと感じ個人会社を設立、プロジェクトを立ち上げアイドルの撮影などさまざまなコンテンツを制作してきたといいます。マイクロソフトのHoloLensというシースルーのヘッドセットを使い、製造業や教育現場の作業手順やトレーニングを行うサービスの提供を行い、これまで本を読みイメージすることしかできなかったトレーニング環境を体験的に学べるようにしたり、現場でマニュアルやチェックシートを見ながら確認できるようにするなど、ヘッドセットを実社会で活用するような業務を行っています。
今回は、イクスアール株式会社から、まだ日本で発売されていない「Apple Vision Pro」を2台、さらに2023年10月に発売された「Meta Quest 3」も併せてお持ちいただきました。Apple Vision Proは購入のため蟹江氏がアメリカまで赴き入手した国内ではまだ貴重ものです。「XR」についての講義では、これまでの仮想現実と端末の進歩を簡単に説明していただきました。XR前提として、まず現実の世界RE(REAL ENVIROMENT)があり、そこにスマートフォンやタブレット、グラス型などの機器をつかい情報を付け加えて見せるAR(AUGMENTED REALITY 拡張現実)、逆に仮想の世界に現実のものを付け加えたAV(AUGMENTED VIRTUALITY 拡張仮想)、すべてが人工のVR(VIRTUAL REALITY 人工(仮想)現実)の4つがあり、仮想と現実を混在させるARとAVがMR(MIXED REALITY 複合現実)に分類されます。MRは仮想の世界に閉じるのではなく現実の世界と融合した世界であり、MRと仮想世界のVRをまとめ、現実では知覚できない新たな体験を創る技術の総称が、XR(EXTENDED REALITY)であると説明します。コンピューティングの進化とともに伸びてきた歴史があり、今後、さらに発展が見込まれれ、その最先端にあるのが現状ではApple Vision Proということです。
体験会では参加した学生がかわるがわるヘッドセットを装着、使用感を確認しました。視線の動きがカーソルになるためセットアップに手間がかかりますが、操作自体はAppleらしいインターフェースで使いやすく、ヘッドセットに慣れた学生は違和感なく使い始めていました。まだ利用できるアプリが少ないため、3Dフォトや動画を確認したり、ブラウザを操作する程度にとどまりましたが、操作のしやすさや画面の美しさや見やすさに可能性を感じるという声が聞かれました。また、Meta Quest 3も併せて起動し、使い勝手の違いを確認しました。先端メディア表現コースには、現在2台のMeta Quest 2があり自由につかえるようにしてありますが、新しいMeta Quest 3を体験した学生からは解像度に驚きの声が上がり、こちらも有意義なものとなりました。
今のところ、産業用の用途のほか、メタバースやゲームなどでコミュニケーションツールとして使われることの多いこうした機器ですが、新たな用途での可能性を感じさせる体験会と特別講義になりました。