本学では、陶・ガラス、メタル&ジュエリー、テキスタイルの工芸分野領域を中心に、領域を横断して共同作業を行うことで、素材の魅力を捉え直すことや美術とデザインの両面から創作について考える工芸分野領域横断を進めてきました(2024年度から美術領域工芸コース(陶芸・ガラス)とデザイン領域メタル&ジュエリーデザインコースを一体化し、新しい「工芸コース」としてスタートします)。
工芸分野領域横断を始め今年度で3年目、1年生から3年生まですべての学年で連携授業が実施されるようになりました。1年生は、工芸の入門編として、二つの専門を別々に学んで合同講評会を行う「工芸制作」、2年生は、二つの専門を組み合わせた作品制作を行うことにより、その特性や活かし方を考える「工芸複合素材実習」、そして3年生は、工芸分野の素材と対話しながら思考する教育を役立てるために、地域産業の活性化を促すプロジェクトとして、社会的な課題に対して広い視野で解決を試みる「工芸・クラフトプロジェクト」に取り組んで来ました。
2024年1月10日(水)に行われた1年生の「工芸制作」は、メタルでは針金を使って作った装身具、テキスタイルでは草木染めの手ぬぐいを制作、学生それぞれが2点の作品を前にプレゼンテーションを行いました。
針金を使った装身具は、自分でデザインのテーマを決めそれに基づきドローイングし、それを自身の身体に合わせて立体化。技法としては、針金を曲げスポット溶接でつなぎました。テキスタイルの草木染めは、化学染料を使わず植物や果実などを煮出して作った染液で染める技法で、自然な色合いが魅力です。学校周辺の植物を各自集めて、実験的な意味も含めた実習となりました。媒染剤に使われる鉄・アルミニウム・銅でも色合いが異なり、それぞれが独自の風合いとなります。作品に草の生えていた場所と季節が記録されることにもなり、それだけでアートといえる出来映えです。
プレゼンテーションでは、学生ひとりひとりが制作した装身具を実際に身に纏い、手ぬぐいを壁に貼り、実習の感想を述べました。金属を使った立体の制作も草木染めもほとんどの学生が初めての体験であり楽しんで制作したことが伝わってきます。いきいきと自分の作品と技法について語る姿が印象的でした。
メタル担当のメタル&ジュエリーデザインコース 浅井美樹非常勤講師は「素材に触れるという経験、あまり経験のない人もいたと思います。その中で色々試行錯誤して楽しいところを見つけることができればそれで良かったと思います。作品の中には、楽しんで制作したことが伝わるものもありました。良い経験ができたのではないかと思います」とまとめました。
草木染めを担当したデザイン領域 共通科目等担当 秋保久美子非常勤講師は「草木染めを経験したことにより身近な植物でも染めることができることがわかったと思います。今は、コース選択や課題のことで頭がいっぱいになってるかもしれませんが、本来、染色というものは暮らしにすごく近いものです。作る過程を楽しむこと、芸大を選んだ最初の理由みたいなところを感じてくれたらいいなと思います」と授業の感想をまとめました。