工芸分野領域横断 3年「工芸・クラフトプロジェクト」最終プレゼンテーションを実施 陶+テキスタイル

 本学では、陶・ガラス、メタル&ジュエリー、テキスタイルの工芸分野領域を中心に、領域を横断して共同作業を行うことで、素材の魅力を捉え直すことや美術とデザインの両面から創作について考える工芸分野領域横断を進めてきました(2024年度から美術領域工芸コース(陶芸・ガラス)とデザイン領域メタル&ジュエリーデザインコースを一体化し、新しい「工芸コース」としてスタートします)。
 工芸分野領域横断を始め今年度で3年目、1年生から3年生まですべての学年で連携授業が実施されるようになりました。1年生は、工芸の入門編として、二つの専門を別々に学んで合同講評会を行う「工芸制作」、2年生は、二つの専門を組み合わせた作品制作を行うことにより、その特性や活かし方を考える「工芸複合素材実習」、そして3年生は、工芸分野の素材と対話しながら思考する教育を役立てるために、地域産業の活性化を促すプロジェクトとして、社会的な課題に対して広い視野で解決を試みる「工芸・クラフトプロジェクト」に取り組んで来ました。

 2024年1月10日(水)、カジツダイスキ 代表の中森絢子さんをお迎えし、プロジェクトでまとめた提案をプレゼンテーション、講評会を行いました。工芸・クラフトプロジェクトの授業は、工芸分野にかかわらずデザイン領域のどのコースの学生でも履修できる授業で、さまざまなコースの学生が集まりました。それぞれが自分の専門領域を持ち寄るような形になり、ユニークな提案となりました。

 学生らは、専攻するコースに関係なく3つのグループに分かれ、中森さんからカジツダイスキの方針や商品について説明を受け、製造・販売する現場を視察、市場性や販売のリサーチを行い、企画をまとめてきました。さまざまなコースの学生が携わっていることもあり、多岐に亘る提案が行われました。商品をより魅力的に見せるためにパッケージとショッパーを提案したグループ、カジツダイスキのネット販売を強化するためきれいな商品撮影ができるようにする撮影マニュアルとSDGsの視点に立つ商品の背景を購買者に伝えるパンフレットを提案したグループ、マルシェでの販売に使える出店ブースと店舗を飾るガーランド、ディスプレイに使う陶器、パンフレットやお金のやりとりに使えるペーパーウェイトといったマルシェで使う店舗を提案したグループと、それぞれのグループが補完しあうような案が揃いました。
 中森さんは、ひとつひとつの試作品を手に取りじっくりと検討。「中間のプレゼンテーションのときよりも具体的になって、すごく良いと思います」とコメントし提案を吟味します。ことにカジツダイスキのロゴをモチーフにしたカラーやデザインなどを使った提案が気に入った様子です。

 プレゼンテーションを終え、中森さんから実際に店舗で使うために採用したい案の発表が行われました。
 1つめのグループからは店のロゴをデザイン化したショッパーを採用、商品パッケージについては数量限定で試してみたいということになりました(制作が手作業のため大量に作ることができない)。2つめのグループからは撮影マニュアルを使いお店のInstagramに写真をアップすることを約束、パンフレットをさらにブラッシュアップして使ってみたいとなりました。
 パンフレットについては変形サイズのため印刷コストとの兼ね合いになりますが、カジツダイスキのイメージカラーを上手く使い商品の背景を上手く伝えられている点を評価していただきました。
 3つめのグループからは、フルーツの断面をスタンプに使ったガーランド、果物をかたどったペーパーウェイトが採用となりました。ペーパーウェイトでは、「果物にあえてキズが入ったように作ればさらにカジツダイスキのイメージに近いものになるのでは。それからガーランドの色合いと模様が素晴らしくて、データ化してもらえたらさらに大きな布にしたりトートバッグにしたり、いろいろなことに使いたいと思います」とさらなるアイデアも飛び出しました。マルシェブースも、機会を見つけ使いたいとなりました。
 学生からは「実際に企業の方とコラボするのは初めてだったので、初めて気づくことや学ぶことが多かったです。新しい発見ができ、すごくいい経験になりました」、「グループのメンバーがちゃんと意見を出してくれて、皆で進められて話し合いができて、ずっと授業が楽しかったです」、「チームで1つの課題っていうのに慣れていなかったのでちょっと大変だなって思っていましたが、みんなと話し合いながら進んでいくのが良かったなって思います」、「デザインは、いろんな人のが流れてるんだなと思いました。グループワークだからこそ、 見通しや計画がしっかりしないと全体が苦しくなりしっかり計画を立てようと思いました」、「布は専門外で自分だけではできないことでしたが、他の専門的な知識がある人と一緒に協力したからできたと感じてます」とそれぞれに充実した様子が窺えました。

 授業を担当した テキスタイルデザインコース 貝塚惇観講師からは「今回、実際の企業の方に来ていただき、いろいろなコースの学生が入るプロジェクトでしたが、授業としては始めてだそうでどう進めていくかとても悩んだ授業でした。実際には、皆さんが想像以上のことをやってくれてそれに一所懸命ついていく、そういう学びが教員側にもありました。実際に中森さんにお会いしてリサーチしてものを作っていく、デザインの仕事のプロセスを体験できたことは、皆さんとても大きく成長できたのではないかと思っています」。工芸コース 田中哲也非常勤講師からは「教員としても貴重な経験をさせてもらいありがとうございました。でも、いちばん貴重な経験をしたのは皆さんだと思います。実際にお客さんの話を聞いて仕事を進める、そしてチームワーク。皆でプロジェクトを立ち上げてやっていくこと、今後もたくさんあると思います。非常に良い経験ができたのではないかと思います」とまとめました。
 成果物としても、学生たちの経験としても、非常に実りのある授業となりました。今後、作品はブラッシュアップされ、実際の店舗やマルシェで使われることになります。お楽しみに。