おがい ちず
准教授
大学を卒業して企業で働き、それから留学と多彩な経歴です。大学ではどのようなことを?
総合人間学部というのはわりと新しい学部で、いろいろな分野を連携して人間と環境のあり方や、人間の活動をとらえることで環境との結びつきや問題を考えたりする領域です。先生にはしっかりしたバックグラウンドがあって、理系・文系それぞれの先生がおり、その中でやりたいことを選びます。選択したコースには建築系と地理学系の先生がいましたが、私は地理学系を選びました。選んだ理由は、旅行にたくさん行きたかったから。先生の趣味が旅で、仕事を口実にフィールドリサーチに行くと言いながら旅行に行ってるようなことをおっしゃっていて、これはいいなと不純な動機から選択したんです。地理学はおもしろいのですが、修士を取得してもっと極めようというようなものではなかったので卒業し、さらに旅にかかわることがしたいと思い、航空会社へ就職するわけです。
普通に仕事するだけで旅行しているわけだ!
そうなんですよね、海外駐在をしたいなと入ったわけですが、最初は空港で働いたりしていました。その後、本社の決算をする部署へ異動となりましたが、管理部門で日々Excelとの戦いばかりでこれはつまらないと。業績もどんどん落ちていくし、それで会社を辞めて留学しようと考えました。
ずいぶん飛躍がありますね。航空会社の前に証券会社へも?
システムを覚えたので、留学するちょっと前に短期的に行ったぐらいです。それで留学なんですが、子供の頃に絵画教室へ通ったことがあり、そういうことをまたやりたいなと。それから海外へ行きたいと思いつつ、全然ワタシ海外に行けてないじゃん!と気がついて。会社も、景気のいい時代は若手をどんどん海外駐在させていたのにもうだめだと思い、自分で行くかと考えました。
どうしてオランダの学校へ?
デザインの傾向がほかの国とはちょっと違っていました。オランダがすごくよかったですよね、当時。ダッチデザインがメディアで大きく取り上げられたりしていました。オランダは、国として大きな産業はありませんが、戦略的な考えがあったようで、クラフトとデザインの間みたいなことに力を入れていました。アートとデザインの中間のような。それから金銭的な事情もありイギリスは無理、ドイツはドイツ語が話せないと入れてくれないし、フランスはデザインの傾向がちょっと違うということもオランダを選んだ理由です。オランダは、補助制度もあって比較的安く行けたんです。私は最初、大学院へ入れられましたが、そこでコテンパンにやられて、学部の2年生に入り直して、そこからなんとか卒業しました。
コンセプチュアルなこととクラフト的なこと、手を動かすようなことも必要あったと思いますが、どうでしたか?
今思えば、できていなかったと思いますよ。日本からも留学生は来ていましたが、多摩美術大学や武蔵野美術大学など、みんな美大出身。できる人たちが来ていたから、それからするとひどかっただろうと思います。だから、逆にコンセプチュアルな方向へ振りました。コンセプチュアル・デザインという、考え方の部分が重要ですし、卒業制作も自分のよく知っている地理学的なことを混ぜ込んで作品を作りました。結果的にはおもしろいものができたと思います。
帰国してからは、自分でデザインの仕事を受けつつ、友人の会社でもデザインの仕事をしながら、作品制作や展示などをしてきました。オフィス系のソフトが使えたことでなんとか生き延びることができました。Excelさまさま、ですよ(笑)。
学生に伝えたいことはどんなことですか?
人生無駄になることはなにひとつない、ということですね。デザインと地理学がつながるとは自分でも思っていなかったので、すごく驚いています。自分があまり好きではないなと思ったことの中にも、なにかしら役に立つことが絶対にあるので、どんなことでもやってみればいいと思います。すぐには役に立たないかもしれませんが、つながってくるときがあるんですよ。どんなことでもやってきた経験が役に立つときが来ます。地理学も、Excelも、役に立つんですよ!