美術領域

現代アートコース 2年

篠田奏心

現代アートコースの学生でありながら、趣味でレーシングドライバーとしてレース活動を行い、また、仕事としてレースクイーンとしても活躍する。18歳で免許を取得後、すぐにサーキット走行を始め、走行会での入賞を機に国内A級ライセンスを取得、本格的にレースに取り組む。アートとクルマ、自分らしさを模索する。クルマ好きで、愛車はGT86。バイト代の大半はガソリン代に消えると笑う。

現代アートは本当に自由

レースやって、レースクイーンやって、現代アート? どうして現代アートコースへ?

けっこう、なんとなくで入っちゃったんです。じつは、高校生のときに家庭内でいろいろとあって、家出してしまった時期があるんです。家に帰らなくなって、当然学校にも行ってない。それで高校を辞めさせられて、初めて母を泣かせてしまいました。これではダメだ、働かなきゃと思ったんです。それで、単発で働けたらいいなと、イベントコンパニオンの仕事がやりたくて事務所に登録したのがきっかけです。

えっ、じゃあ高校は?

それが、高校は中退したんですけど、足踏みすることなく別の高校に変わって、ちゃんと卒業しました。その変わって入った高校が名芸の指定校で、推薦入試があったんです。指定校推薦の欄に現代アートって書いてあって、デッサンの練習をそんなにやったわけでもないし、デザインにしようかと思いましたが、学力が必要でテストがあるみたいに書いてある。ああ、無理だなと思って、現代アートを調べると面接だけ。じつは、面接だけだったんで入ったんです。

いやいやいや、本当は現代アートがいちばん知性と学力が必要だぞ!(笑)。入ってみてどうだった?

周りの人がやっぱりめちゃくちゃ絵がうまかったりして、ついていけないみたいな。1年生のファンデーションで、デッサンも油絵も、自分のセンスの無さに気がついちゃって、一時期すっかりやる気をなくていました。2年生になったとき、秋吉先生(秋吉風人准教授)に出会って、自分の好きなことを生かして作ったらいいといわれました。クルマがすごく好きなんですけど、クルマに関連した作品を作ってみました。講評があったとき、いろいろな人に見てもらって、こういうのを作っていったらいいと思うよって、初めて褒められて、そこでちょっと楽しいなって。2年生になってから思いました。

クルマが本当に好きなんだ

はい。18歳で免許を取って、やっぱりスポーツカーだってトヨタのGT86に乗り始めて、サーキットへ連れていかれたんです。父の影響なんですけど、サーキットへ行くからついてきてって感じで。いったら走らされて、わりといいタイムが出て、それなりに速く走れて。それからサーキットへ行くことが生活のルーティーンみたいになったんです。そうしているうちに走行会に出るようになり、あるとき3位を取れたんです。そうしたら父に、国内A級ライセンスを取りに行こうといわれ、学校もあるし休みはないし、私には無理、嫌だといったんは断ったんですけど、経験としてやってみるのはいいかなと思い直して。免許を取って1年後くらいにはライセンスを取っています。

お父さんに引き込まれたんだ。クルマに乗せられて、ドライバーになるように誘導されたみたいだね

私のうちが整備工場をやっていて、そういうこともあってですね。おかげで、うちにある要らなくなったオイル缶だとかタイヤだとか部品だとかを材料にして作品を作っています。自分の好きなことや家庭環境をアートに結びつけて作品を作るようになって、作品を作ることがおもしろくなってきました。

今後はどんな作品を作ってみたい?

これまでは自分でなんとかできる規模の作品を作っていたんですけど、もっともっと大きなものを作ってみたいですね。例えば、エンジンとか、ふつう持ってこようと思っても持ってこられないじゃないですか。そういうものを生かして、ちょっと大きめのものを作ってみたいです。現代アートは本当に自由で、例えば洋画だったら、絶対にキャンバスと向き合わないといけないですよね。でも、現代アートは、絵でもいいし、オブジェでも映像でもいい。幅が広いというか幅がない。本当に飽きることがないんじゃないかと思います。

作品「マイオイル」。オイル缶と点滴棒を組み合わせたインスタレーション。点滴パックの中身はオイルで、きれいなパックには自分の生年月日が記されている。年代とともに汚れていく

クルマ関連のものを使い、自己を表した作品たち。オイル缶とタイヤに、ハイヒールのサンダルが組み合わされる。ハイヒールで遊んでいた頃の自分との関連づけがテーマ。サーキットの車載映像を作品に使うことも